オンライン代理制御(経済的出力制御)は、10kW~500kW未満の旧ルール事業者を含め九州電力管内で2022年12月に実施されます。このオンライン代理制御(経済的出力制御)の対策を行っていない500kW未満のオフライン太陽光発電事業者は8時~16時までの発電収益が最大年間30日、出力抑制により収益が減少します。そのため、今回新たに出力抑制の対象となった事業者様向けに、出力抑制を回避し売電収益を向上させる方法をわかりやすくご説明します。

3月16日時点のオンライン代理制御によるオンライン化の効果と状況はこちら

2023年1月のオンライン代理制御の運用によるオンライン化メリットの結果はこちら

2023年6月5日更新

オンライン代理制御(経済的出力制御)とは

出力制御の対象事業者が拡大

今回の取り組みで太陽光発電事業者にとって大きくルールが変わりました。

■ 10~500kW未満の太陽光発電設備が出力抑制の対象に加わる [収益が減少]

出力抑制の対象が拡大したことで、今まで出力抑制とは関りがないと思われていいた10kW~500kW未満の旧ルール事業者も各自で調べ対応を考えていく必要があります。オンライン代理制御が始まると出力制御の対象日には8時~16時までの8時間分の出力が収益から削減される事となります。年間の収益減少率は5%~10%と想定されています。

オンライン制御対象事業者の説明
九州電力送配電
出力制御実施方法の見直しについて(2022年12月以降の実施方法)抜粋

太陽光発電設備の出力抑制とは [電力会社による調整]

太陽光発電設備の出力抑制は、各電力エリアの需要と供給のバランスに応じて太陽光発電設備の出力を絞り制御するものです。
旧ルールの九州電力エリアでは現在、8時~16時までの出力制御が求められ、前日までに九州電力から太陽光発電事業者へ停止の連絡が来ることになっています。

電力需給の電源構成図
資源エネルギー庁 再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策 より

オンライン制御の仕組み [電力の供給が需要を上回った時だけ制御する]

 九州電力管轄エリアには数多くの太陽光発電所が建設され、電力の需要を上回る発電が出来る状態にあります。
そのため、現在も500kW以上の太陽光発電所でオフライン(手動入り切り)を行う旧ルール事業者は、電力会社から連絡があれば8時~16時まで発電を停止する義務が発生しています。実際は8時~16時まで止める必要ない場合も、オフライン事業者は8時間の停止が求められ、この考え方はオンライン代理制御となっても変わりません。
 この8時間の出力制御に対して、電力の需要を上回る時だけ、九州電力送配電側とインターネットを通じて自動で発電所出力を抑えるオンライン化という仕組みがあります。このオンライン化の仕組みを導入したオンライン化事業者は、1日に必要な時間のみ制御を受けますので、例えば1日の出力制御時間が2時間で終了する場合もあり、2時間の出力抑制で1日とカウントされます。

太陽光発電出力制御のオンライン化工事の説明図
監視装置メーカーフィールドロジック 太陽光発電の出力制御について より抜粋

オンライン代理制御の仕組み [オンライン事業者が需給バランスの調整弁になる]

 九州電力管轄で2022年12月からはじまるオンライン代理制御について簡単に説明します。この取り組みは、オフライン事業者は柔軟に出力の抑制を行うことができない為、オフライン事業者に代わってオンライン事業者が多くの出力制御を受ける仕組みになっています。そして、オンライン事業者が多く制御を受けた分は、2か月後に返金されます。[電力会社によっては、オンライン代理制御がスタートした後も、オフライン事業者は一部手動での入り切りが求められる場合があります]

オンライン代理制御の制御対象出力についての説明図
オンライン代理制御の制御対象出力 イメージ図

代理で出力制御を行う仕組みではない? [オンライン事業者優位は変わらない]

 オンライン代理制御によって旧ルールのオフライン事業者は2022年12月以降、現地での出力の入り切りは不要になります。ただし、8時~16時までの出力抑制は変わりません。オフライン事業者は今までと変わらず最大30日間、8時~16時までの収益が逸失します。この点、少しわかりづらいのですが、オンライン事業者が代理で出力制御を行いますが、[代理で行った出力制御 = オフライン事業者の逸失利益]ではありません。[代理で行った出力制御<オフライン事業者の逸失利益]となります。

オンライン事業者とオフライン事業者の出力制御の違いについての説明図
オンライン事業者とオフライン事業者の出力制御の違い イメージ図

オンライン事業者はなぜ優位? [調整・管理できないエネルギーの問題]

オンライン代理制御について、オンライン化によるメリット等よくわからない点があり資源エネルギー庁へ問い合わせを行ったことがあります。

その結果、「オンライン事業者は設備費用を投資してオンライン化し電力の需給バランスの調整役になっており、多く出力制御を行った分は返金されるが、オフライン事業者はエネルギーを調整する事が出来ない為、当初の通り8時~16時までの出力抑制を受けたものと同じ位置づけとする」といった回答でした。

これは、オフライン事業者は不安定電源であることが、オンライン事業者より不利になる要因ではないかと推察します。エネルギーを需給バランスに応じて調整できる設備を[調整力]と呼ばれ、太陽光発電に限らずここ数年注目されています。

需要と供給のイメージ図

オンライン化によるメリットは17%? [資源エネルギー庁の説明資料から]

資源エネルギー庁HPの[出力制御について]という説明文の中に下記文言があります。当初、なっとく再生可能エネルギーへ問い合わせた際、下記文言からオンライン化による出力制御の低減効果17%ですと説明を受けたことがあります。

これにより、出力制御量の17%で投資対効果を検討すればよいと考えていましたがそうではありませんでした。これは、あくまでオンライン化が普及する事で九州全体の出力制御量が低減するというものであり、オンライン化による発電事業者の出力抑制低減効果とは全く別の説明だと後になりわかりました。

オンライン制御が拡大すると、より実需給に近い柔軟な調整が可能となるため、現状の運用に比べて制御量の低減が期待されます。例えば、既に出力制御が行われている九州エリアでオンライン代理制御を導入した場合、現状に比べて再エネ出力制御量全体が2割程度低減する効果が見込まれています。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/grid/08_syuturyokuseigyo.html
オンライン代理制御による太陽光発電の出力制御低減効果についての説明
資源エネルギー庁 経済的出力制御(オンライン代理制御)について より抜粋

現在、他の事業者はどうしているのか? [JPEA資料から見えてくる事]

2021年12月時点でJPEA[太陽光発電協会]が実施したアンケートによると、下記結果になります。

① 500kW未満:現在制御対象外
  オンライン化未対応(予定なし/未定)97% 対応済み 2%

② 500kW以上:すでに制御対象
  オンライン化未対応(予定なし/未対応)3% 対応済み 44% 計画中 23%

出力制御対策としてのオンライン化実施割合の説明
第37回系統ワーキンググループ 資料4-2 より抜粋 [JPEA作成]

オンライン化による出力抑制の削減率と投資対効果について [収益改善]

私の経験から、九州電力エリアにおけるオンライン化することによる出力制御の低減率は30%以上あると思っています。出力制御率は基本的に一定であるため九州電力エリアのオンライン化した旧ルール発電事業者は同程度のメリットを享受しているものと思います。ここでは、JPEA[太陽光発電協会]が作成した資料を基に、削減率と投資費用、投資対効果について説明します。

出力制御の削減率はどの程度か [30%以上の根拠]

九州電力送配電の見通しによると、旧ルールオフライン事業者の出力制御率は9.4%、旧ルールオンライン事業者の出力制御率は6.1%となっています。この資料から、2022年度のオンライン化による出力制御の低減率は約35%となります。

JPEAでも同様の数値を基にメリット計算例してメリット計算をしています。

九州電力エリアの太陽光出力制御の見通しに関する説明
第36回系統ワーキンググループ 資料2-9より抜粋 [九州電力送配電作成]

導入費用の目安

オンライン制御の導入費用は太陽光発電設備のシステム構成、設備規模によって様々です。比較的シンプルなシステム構成で導入できる場合は100万程度で収まるかもしれません。JPEAにて初期費用の想定目安の資料がありますのでご参考にして下さい。

発電設備規模PCSメーカー立会い
調整費
制御機器
通信機器
現場設置調整
工事費用
初期費用
合計目安
(概算)
低圧(10ー50kW)施工店実施10~20万円販売施工店20~50万円
高圧 50kW~500kWPCSメーカーによって違うため個別見積もり20~100万円施工店、制御機器メーカーの個別見積もり50~300万円
高圧 500kW~2,000kW未満PCSメーカーによって違うため
個別見積もり
100~200万円施工店、制御機器メーカーの個別見積もり200~700万円
規模・PCSの台数によっても変動
特別高圧専用線による特別工事を伴う専用線による特別工事を伴う専用線による特別工事を伴う2000~4000万円
規模により大きく変動
第37回系統ワーキンググループ 資料4-2 より抜粋 [JPEA作成]

投資回収年数の目安

下記は、JPEAにて九州エリアを例に売電単価24円/kWhのケースでオンライン化による経済的なメリットを算出し、初期費用を何円で回収できるかを算定した資料になります。実際の回収期間は売電単価によって大きく異なるため個別のメリット計算が必要です。

太陽光発電設備のオンライン化に必要な初期費用の投資回収年数は設備容量が大きいほど、費用回収期間が短い傾向にあります。

経済的出力抑制(オンライン代理制御)におけるオンライン化にかかる費用と費用対効果の説明
第37回系統ワーキンググループ 資料4-2 より抜粋 [JPEA作成]

オフライン事業者の検討すべき項目 [要点まとめ]

オフライン事業者がオンラン化を検討するには、下記項目が必要になります。

1.残FIT期間  投資回収年数と残FIT期間を天秤にかけて検討する必要があります。

2.設備容量  設備容量が小さい場合、投資回収が長く導入の意味がなくなります。

結論としてオンライン化すべきか [オンライン化が〇となる条件]

オンライン化のメリット計算には、売電単価、オンライン化設備費用、残FIT期間などから算定しますので一概には言えません。しかし、旧ルールの事業者であっても残FIT期間は少なくとも10年程度残っており、現在の九州電力えエリアの出力制御の状態が続くとするならば下記条件が整えばオンライン化によるメリットが出やすいものと考えます。

1.設備容量が500kW以上でまだオンライン化していない太陽光発電事業者

2.設備容量が500kW未満~350kWで残FIT期間が10年以上ある太陽光発電事業者

※オンライン化のメリット試算は経験のある専門業者へお尋ねされる事をおすすめします。九州電力・中国電力エリアであれば太陽光メンテナンスサポートでもご質問・メリット試算へお答えします。350kW以上の発電所については、先着5社限定で見積を無償で実施しています。

オンライン代理制御によるオンライン化収益の実績[2023年1月]

オンライン代理制御による九州電力の運用結果が明らかになりました。太陽光発電事業者のもとには請求書としてその結果が届ているものと思います。結論としては、メリットは月の売電収入の6.29%になります。旧ルールの太陽光発電事業者への出力制御は2023年1月時点でエリアに差はあるものの、1,2回程度でした。

月1,2回程度の出力抑制で月の売電収入で6.29%のメリットが出ています。2023年3月には10回以上の出力制限が起こっていますのでオンライン代理制御の運用によるオンライン化のメリットは何倍にもなる事が予想されます。その結果が分かるのは2023年5月の請求結果で判明します。

九州電力送配電 オンライン代理制御の精算比率(2022年3月末時点)
https://www.kyuden.co.jp/td_renewable-energy_purchase_control_online_proportion.html